日本の科学技術。
しばらく報道にふれてなかったので、「事業仕分け」が法的拘束力も何もないただの財務省の参考資料づくりなんて今の今まで知らなかった。
茶番なのはわかってましたけど、これじゃほんとうに意味あるんでしょうか?
そもそも、事業の選定が財務省ってうわさもありますが。
ところで、今回の仕分けで一番の注目点のひとつが、科学技術関連分野の予算策定です。
スパコン、iPS細胞、宇宙関連分野など、日本の得意分野がばっさり切られたことで話題となりました。
これにはまず旧帝大+早慶の学長が共同声明を発表するという異例の事態に。さらにノーベル賞受賞者で理研理事長の野依良治氏も仕分け事業を批判する談話を発表しました。
資源のないわが国(この紋切り型の文句もそろそろあきてきたのですが・・・)が科学技術の振興をおろそかにしては未来がない、と。
たとえこの仕分けが拘束力がないとしても、「科学技術立国」をまがりなりにも標榜しているわが国がこうした先端科学分野に「ムダ」の烙印をいったんは押した、という事実はかなりおもくうけとめるべきでしょう。
だからネット言論は批判一色かといえば、そうでもないようです。
たとえばさきの9大学学長の声明、野依理研理事長の発言にはすくなからず疑問をもつひともいらっしゃるようで。
こういう方のかんがえをまとめると、
①科学技術の発展に国として力をいれることそのものには賛成だ。
②だから、政府が研究に補助金をだすことにも反対ではない(さすがに福祉のために全面停止しろ、などというひとはいないようです)。
③でもそれを主張する研究者側の姿勢は「もらって当然」にみえる。国民の血税をつかうのに、あたりまえのような顔をしているのは何事か。そもそも、科学技術の発展に必要なのは公的な援助だけか。もっと民間の力を活用するとか、大学そのものの改革をすすめるべきではないのか。援助をうける側の研究所、大学はそれにふさわしい体制をととのえているのか。
あとは個別に、スパコンは不必要とかそういう話がちらほら、といったところでしょうか。
冷静にかんがえれば、大学や研究所などもいってみれば「既得権益受益者」です。くだんの9大学は、旧帝大は元国立大。早慶は私立ですが、科研費や助成金など補助金でなりたっている点がおおきいことをかんがえると実態は半官立といったところでしょうか。補助金がきられればさぞくるしいことでしょう。
さらにいえばこの声明の中の「大学の発展が国富につながる」というのもちょっと自信過剰なような。もちろんすばらしい研究をされている方もたくさんいらっしゃいますが、ごくつぶしもすくなくないのではないでしょうか(この場合の「ごくつぶし」とはもちろん「カネにならない研究をしている」という意味ではありません。「研究や教育に力をいれずに、ただ象牙の塔でぬるま湯につかっているだけ」ということです)。きびしい経済状況におかれた国民からとった税金を「よこせ」と臆面もなくいうからには、それを十分いかすような体制をきちんと整備しているのでしょうね?
大学・研究者自身の努力をとわないままに、科学技術の発展という「美名」のもと、こうした分野を聖域化してしまってよいのか?納税者としては、気になるところではあります。
要は、科学技術にお金をかけることは大事だし、それが日本の国益につながることもたしかだけど、まず大学や研究所からできることもあるのではないかと。
今のながれだと、
日本は資源がない
↓
だから科学技術を発展させるしかない
↓
だから政府はカネをだせ
になってますよね。
もちろん企業は基本的にカネになることしか手を出さないし、国防に関連した科学技術などはやはり国が責任をもつべきだとおもうのですが、もっと民間の力を結集するとか、大学同士の連携を今以上にふかめるなどの目にみえる努力も必要だとおもうのですよ。そうでもなければ、たとえばくだんの学長声明なども「元国立大学はまだ国費にたよろうとしている。独法改革の意味がないじゃないか」という風によめるわけです。かつかつのくらしをしている人もいるのに、終身雇用のうえに研究費もよこせなんて、けっこうなご身分ですね、といわれかねません。
別に民主党議員をかばうわけではありませんが、正直な話、科学技術開発の話をされては、文系人間には手も足もでないわけですよ。技術開発はお金がかかるけれど、将来の国富につながる可能性がある、ぐらいのことしかわからないのです。だから科学技術に金をかけるなとはいわないけど、潤沢に資金のない今のありさまでは、何とかある中からひねりださなければならない。でもほかにやらなきゃいけないこともある。だから予算をけずることもかんがえなくてはいけないが、技術のことはわからないのでどれだけけずっていいか見当もつかないと。だからおもいきってけずったら非難轟々←今ここ、ってなところかと。
ところでブログをみていると、スパコンの説明をしたプレゼンターの技量のまずさを指摘する人もすくなくないですね。
会社でも政府でも、予算をきめるのは非専門家たる文系人間だったりするわけですから、研究の重要性をそういう人にもわかるように説明してくれないと、予算がおりないのは当然な気もします。「自分の研究の重要さを客観的に非専門家にわかりやすく説明する」ことにたけた研究者を今まできちんとそだててこなかったとしたら、それは研究機関の怠慢でしょう。こんなの理系の就活生はだれでもやっているわけですが。
まあそもそも政治の席上で科学技術が議論されるなんて今まであまりなかったことですから、世論の喚起という意味ではおおきな成果があったといえるのではないでしょうか。まだ予算も決定されたわけではありませんし、実際問題誰にもきらわれたくない鳩山さんあたりを攻撃しまくれば予算復活のうごきはかんがえられるでしょう。
これを機会に、日本のアカデミズムの正常化および、政府(というか組織の財布をあずかるすべての文系人間)による科学技術開発への理解の促進がすすむことをねがってやみません。